「自分の事を主人公だと信じてやまない踏み台が、主人公を踏み台だと勘違いして、優勝してしまうお話です」― 凡人が運命を書き換える“勘違い”系異世界譚
総合評価

※画像はTOブックス様より引用
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作品情報
- タイトル:自分の事を主人公だと信じてやまない踏み台が、主人公を踏み台だと勘違いして、優勝してしまうお話です
- 著者:流石ユユシタ
- イラスト:卵の黄身
- 出版社:TOブックス
あらすじ
漫画やアニメの主人公に憧れて育った少年は、ある日人を助けて命を落とす。
その行動に対して神が与えたのは――なんの能力も持たない、モブのような人間としての異世界転生だった。
転生先の名前は「フェイ」。
彼には“主人公の踏み台(咬ませ犬)”として無残な最期を迎える未来が待っていた。
だが、神の悪戯にまったく気づくことなく、フェイは「自分こそが物語の主人公だ」と信じて疑わない。
ひたむきに努力を重ね、歪な運命さえも塗り替えていく彼の姿に、次第に周囲の評価も変化していく――。
勘違いと信念が織りなす、痛快かつ逆転の“異世界英雄譚”が、今始まる。
詳細評価(5段階)
- 主人公:
勘違いが凄まじいが、完全な努力型主人公で読んでいて好感が持てた。 - ヒロイン:
複数のヒロインが登場し、どのキャラも現段階では主人公より強く、魅力的に描かれていた。 - シナリオ:
設定がしっかりしていて、今後どう展開するのか楽しみになる構成だった。 - 気楽さ:
流血や怪我、死亡描写があり、油断できない展開。特に主人公が一番死にそう。 - 後味:
綺麗に締まってはいるが、続きが気になる絶妙な終わり方だった。 - 長さ:
値段相応の分量。もう少し読みたかったが、ストーリーとしては一区切りついていた。
良かった点
まず最も印象に残ったのは、主人公フェイの愚直なまでの努力です。
特別なスキルもチート能力も何も持たない彼は、転生早々から敵にすら歯が立たず、まさに“雑魚キャラ”としての現実を突きつけられます。
それでもフェイは、自分が物語の主人公だと信じて疑わず、「これは試練だ」と前向きに受け止め、あらゆる努力を重ねていきます。
また、彼が転生した世界自体が、もともと“悲惨な結末”が繰り返される運命に支配された場所であるという設定も興味深い点です。
フェイの純粋な信念と行動が、少しずつその運命を塗り替えていき、ヒロインのひとりが救われる展開には、確かな感動がありました。
気になった点
個人的に読みづらさを感じたのは、作中に挿入される“神視点の会話パート”です。
このパートは、某匿名掲示板のスレッドのような文体で書かれており、語尾やノリもかなりインターネット文化寄りの表現になっています。
私は普段掲示板文化にあまり触れないこともあり、正直なところ読んでいて内容が頭に入りづらく、テンポを削ぐ要因になってしまいました。
好みが分かれる構成ではありますが、もう少し読みやすい形だったらより物語に集中できたと思います。
実際に読んで感じたこと
最初はタイトルの長さと独特な文面に少し身構えてしまいました。
しかし読み進めていくうちに、「どこかで読んだことがあるような……」という既視感が芽生え、後に『カクヨム』で読んだことのある作品だったと気づきました。
その経緯もあって改めて書籍版を購入したのですが、内容は思いのほか好みに合っていて、結果的には読んで正解だったと感じています。
フェイは、特別な力を持たずに異世界へ転生し、凡人としての限界に何度も直面します。
それでも「これは成長イベントだ」と信じて努力を続ける姿勢が、物語を前向きなものにしており、非常に好感が持てました。
ヒロインの運命を変えていく展開も印象深く、ただのギャグ作品にとどまらない深みを感じさせてくれます。
一方で、掲示板風の神会話パートはやや読みにくく、作品全体のテンポを阻害する印象がありました。
とはいえ、それを差し引いても魅力的な部分の方が強く、読み応えは十分でした。
まとめ
凡人でも努力と信念で運命は変えられる。
本作はまさに、そんな王道を“勘違い”という切り口から描いた異世界転生ストーリーでした。
タイトルの意味はいまだに完全には理解できていないものの(笑)、
物語の構成やテーマ、そして何よりフェイというキャラクターの魅力には強く惹きつけられました。
読み進めるうちに「応援したくなる」主人公像がしっかりと描かれており、ライトノベルとしての満足度も高い一冊です。
今後の展開にも十分期待できるシリーズだと思います。
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