ラノベ

『隣の席のヤンキー清水さんが髪を黒く染めてきた』感想|黒髪に込めた想いと、不器用な恋の始まり

千代瀬

総合評価

※画像は角川スニーカー文庫(KADOKAWA)様より引用

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作品情報

タイトル:隣の席のヤンキー清水さんが髪を黒く染めてきた
著者:底花
イラスト:ハム
出版社:角川スニーカー文庫

あらすじ

主人公・本堂大輝の通うクラスの隣の席には、学校で有名なヤンキー――清水さんがいた。
校則で染髪が禁止されているにも関わらず、彼女の髪はまぶしいほどの金色。
教師にも物怖じせず、周囲から一目置かれる存在だった。

そんなある日、友人との何気ない会話で「好きな女の子のタイプ」を聞かれた大輝は、
「黒い髪の子が好き」と答える。

翌日――金髪だった清水さんが、黒髪になって登校してきた。

最初は黒い髪の女の子の正体がわからず、清水さんに声をかけてしまう大輝。
彼女を褒めてみると、その視線や言葉の端々から、ほんの少しの照れと不器用な優しさが伝わってくる。

これは、素直になれないギャルの清水さんと、少し鈍感な本堂くんが少しずつ距離を縮めていく、
等身大の青春ラブコメディ。

詳細評価(5段階)

主人公:
大輝はやや鈍感ではあるが、決して無神経ではない。
清水さんの変化に気づいてからの言葉や行動に優しさがあり、
相手の気持ちを汲もうとする姿が印象的だった。
静かな思考型の主人公として、物語の“受け手”としてのバランスも良く、
いざという時に前に出られる心の強さもある。

ヒロイン:
清水さんは強がりながらも、実は誰よりも繊細。
大輝の発言を受けて、好きになってもらうため努力する姿が健気で可愛らしい。
ギャルという外見からは想像できないほど内面が真っ直ぐで、
大輝を前にすると素直になれず損をしてしまうところも愛らしい。

シナリオ:
恋愛のきっかけは小さな出来事だが、そこから始まる心の変化が丁寧。
清水さんの視点が挟まることで、主人公が知らない想いが読者にだけ伝わる構成が秀逸。
派手な展開よりも、表情や言葉の裏にある感情で魅せるタイプの物語で、
展開は王道ながらも安心して読める。彼女視点の描写が多いのも魅力的。

気楽さ:
日常的な舞台ながらも心情描写が多く、軽い読み味というよりは
“ゆっくりと心に沁みる”系の読書体験。
テンポは落ち着いており、じっくり読める作品。

後味:
綺麗な形でまとまっている。
主人公の鈍感さがすごく、周りから見ればもう付き合っているような状態なのに、
まだ関係が進展していないもどかしさも魅力。
今後の続編で二人が両想いになれるのか、続きが気になる。

長さ:
1冊完結型としてまとまっており、感情の起伏も過不足なく描かれている。
余白のある終わり方も含めて、“青春の一瞬”を切り取ったような美しさがある。

よかった点

ヤンキーな見た目をしている清水さんが、主人公の発言を受けてすぐに行動に移すところが印象的でした。翌日にはもう実行しているなど、好意が隠しきれていないのが微笑ましく、本人を前にすると恥ずかしさからつい素っ気ない態度を取ってしまう姿がとても可愛らしかったです。また、主人公も清水さんのために前に出る勇気を持っており、互いに少しずつ変わっていく二人の関係が丁寧に描かれていたのがよかったです。

気になった点

主人公が鈍感なだけでなく、女性に対して少し踏み込みすぎた褒め方をしてしまう場面が気になりました。悪意がないのは伝わるのですが、言葉選びがストレートすぎて思わずドキッとしてしまうこともあり、見方によっては“女たらしっぽく”感じてしまうかもしれません。もう少し照れや戸惑いを見せてくれたら、清水さんとの距離感の変化がより丁寧に感じられたと思います。それでも根底にある誠実さや優しさが伝わるため、決して嫌な印象ではなく、“ちょっと危なっかしいけれど憎めない”主人公として描かれていたのが印象的でした。

実際に読んで感じたこと

最初は「金髪のヤンキーが黒髪に?」というギャップに惹かれて読み始めましたが、
ページをめくるうちに清水さんというキャラクターの内面の丁寧さに引き込まれました。
見た目の派手さとは裏腹に、人の言葉を真っ直ぐ受け止めて努力できる姿が本当に健気で、
不器用ながらもまっすぐな恋心が伝わってきます。

また、主人公の大輝もただの鈍感キャラではなく、
いざという時にしっかりと行動できる強さがあって好感が持てました。
二人の会話のテンポや、何気ない日常の中に生まれる小さな変化が心地よく、
青春特有の“言葉にできない想い”を描く作品としてとても良かったです。

さらに、二人を取り巻く友人や家族も温かく、
それぞれがさりげなく支え合っている雰囲気が読んでいて心地よく感じられました。
全体を通して穏やかで優しい空気感が流れ、
読み終えたあとにふっと笑顔になれるような、気持ちの良い青春ラブコメでした。

まとめ

ヤンキー×青春ラブコメという定番の題材ながら、
清水さんの内面の繊細さや変わろうとする姿が丁寧に描かれていて、
読後には心が温かくなる作品でした。

見た目の印象に反してまっすぐで可愛らしいヒロイン像や、
そんな彼女の恋心には気づかないものの、
その本当の優しさや気配りの良さを見抜く主人公・大輝の存在が心地よく、
“等身大の恋愛”の魅力をしっかりと感じられます。

日常の何気ない場面から少しずつ距離が近づいていく描写が自然で、
派手な展開がなくても最後まで引き込まれました。
続編があるなら、今度こそ二人の関係が一歩進む瞬間を見届けたい
そう思える、優しくも胸がきゅっとなる青春ラブストーリーです。

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