『この△ラブコメは幸せになる義務がある。③』感想|三角関係が動き出す、恋と成長の夏合宿
総合評価

※画像はKADOKAWA様より引用
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作品情報
- タイトル:この△ラブコメは幸せになる義務がある。
- 著者:榛名千紘
- イラスト:てつぶた
- 出版社:電撃文庫(KADOKAWA)
あらすじ
凛華の恋を応援するため、麗良と仲良くなれるよう手助けをしていた天馬。
しかし、なぜか麗良からの好意が自分に向けられていることに気づき始める。
さらにその様子を凛華が目撃してしまい、三人の関係は少しずつぎこちなくなっていく。
そんな中、麗良から合宿の誘いが届き、天馬は「これで二人が仲良くなれる」と奮起。
――けれども、凛華と麗良が“仲良くなりたい相手”は、どちらも天馬で……?
三角関係がさらに加速する、恋の季節の第3巻!
詳細評価(5段階)
主人公:
天馬の優しさと鈍感さが今回も絶妙なバランス。
相手を想って行動しているのに、気づけば三角関係を加速させてしまう天然さが面白い。
凛華と麗良、どちらにも誠実に接しようとする姿勢が好印象で、応援したくなる主人公だった。
ヒロイン:
凛華と麗良、二人の魅力がしっかり描かれた巻。
凛華の健気さと、麗良のまっすぐな想いの対比が見事で、読者としてもどちらを応援するか迷うほど。
タイトル通り、天馬だけでなくヒロインたちにも“幸せになる義務”が描かれており、特に凛華は序盤から考えると大きく成長した印象を受けた。
シナリオ:
合宿イベントという王道ながら、キャラ同士の感情が一気に動く展開が秀逸。
前巻までの流れを踏まえ、互いに天馬への想いに気づかぬまま、彼が二人を“くっつけようとする”という構図が三角関係の妙を際立たせている。
笑いと切なさの緩急も心地よく、シリーズの中でも特に印象的な一冊。
気楽さ:
ラブコメらしいテンポの良さと、夏の合宿という季節感が相まって非常に読みやすい。
三角関係の緊張感はありつつも、ギスギスしすぎず軽やかに読める構成。
会話や描写にもユーモアが多く、シリアスと日常のバランスが絶妙で息抜きにもぴったり。
後味:
それぞれの気持ちがすれ違いながらも、前向きな方向へ進んでいく終盤が印象的。
完全な解決には至らないものの、次に繋がる余韻が残るラストが心地よい。
恋愛の苦さと成長を両立させた、シリーズらしい温かい読後感だった。
長さ:
テンポが良く、キャラの心情描写も自然で中だるみがない。
一冊の中で合宿から次の関係構築までがしっかり描かれており、満足度が高い。
シリーズ中でも程よい長さとボリュームで、読後の余韻をしっかり感じられる一冊だった。
良かった点
2巻までの積み重ねがしっかり生きており、読者としてヒロインたちの気持ちを理解した上でラブコメを楽しめるのが魅力でした。
凛華と麗良、二人が互いに天馬を信頼している関係性がとても心地よく、三角関係でありながら不快さを感じさせません。
特に序盤の凛華を知っているだけに、彼女の成長が丁寧に描かれていて感慨深く、シリーズを追ってきた読者ほど嬉しく感じる構成でした。
気になった点
主人公・天馬の鈍感さがやや強く描かれすぎているように感じました。
もともと自己肯定感の低いキャラクターであることは理解できますが、ここまで明確な好意を向けられても全く意識しないのは少し不自然に思える場面も。
彼の優しさゆえの鈍さではあるものの、もう少し“揺れる気持ち”が描かれていれば、よりリアルで深みのある三角関係になったかもしれません。
実際に読んで感じたこと
第3巻では、キャラクターたちの関係性がいよいよ核心に触れ、まさに“恋の夏合宿”といえる内容でした。
凛華と麗良、二人のヒロインが天馬を信じ、互いに相手を尊重しながらも想いを抑えきれない姿がとても丁寧に描かれていて胸に響きます。
天馬の鈍感さによって物語がもどかしくも温かいトーンで進み、読者として“見守りたくなる”ような優しい物語になっていました。
三角関係の難しさを真正面から描きつつ、キャラの成長を感じさせるシリーズ中でも印象的な巻でした。
まとめ
『この△ラブコメは幸せになる義務がある。③』では、三角関係のもどかしさと、それぞれの想いの成長がより深く描かれていました。特に凛華がこれまで抱えてきた不安や迷いと向き合い、合宿という非日常の時間を通じて自分の本当の気持ちを自覚していく過程が丁寧で印象的です。天馬の鈍感さに思わずやきもきする場面もありますが、彼の誠実さと優しさが物語の軸となり、関係を壊さずに支え続ける姿勢に温かみを感じました。恋愛の痛みと優しさ、そして青春の瑞々しさが詰まった、シリーズの転機にふさわしい一冊です。
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<前巻のレビュー>
👉この△ラブコメは幸せになる義務がある。②はこちら

