『お前ら、おひとり様の俺のこと好きすぎだろ。4』感想|おひとり様を貫いた先にある納得の最終巻
総合評価

※画像はKADOKAWA様公式サイトより引用
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作品情報
タイトル:お前ら、おひとり様の俺のこと好きすぎだろ。4
著者:凪木エコ
イラスト:あゆま紗由
出版社:ファンタジア文庫(KADOKAWA)
あらすじ
「ひとりでいるのが一番気楽」――
そう信じてきた主人公・春一の考えは、この最終巻でも変わらない。
同級生や学校関係者にその優秀さが次々と知られていく中で、春一の望みとは裏腹に周囲との距離は縮まり続けていく。
前回のキャンプをきっかけに好意を寄せられる羽鳥との関係はどこか噛み合わず、美咲からはなぜか勝負を挑まれるなど、春一の周囲は相変わらず騒がしい。
「ひとりでいるのが一番気楽」という信念は最後まで変わらない。
それでも、春一の意志とは関係なく距離を縮めてくる周囲に振り回されながら、自分なりの“落としどころ”を見つけていくことになる。
一人でいたい主人公と、放っておいてくれない周囲との関係に、どんな区切りがつくのか。
これまで積み重ねてきたやり取りを丁寧に回収する、シリーズ最終巻。
詳細評価(5段階)
主人公:
今巻でも「おひとり様」を貫こうとする春一の姿勢は一貫しており、そのブレなさがとても心地よい。
口では「めんどくさい」「放っておいてほしい」と言いながらも、相手の本心を理解したうえで誠実に対応する姿が印象的でした。
一人を愛するがゆえの距離感の取り方や行動が最後まで春一らしく、シリーズを通して積み上げてきたキャラクター性がしっかりと結実していたと思います。
ヒロイン:
最終巻らしく、これまで登場してきたヒロインそれぞれに“答え”が用意されていた点が非常に良かったです。
特に序盤では春一を引っ張る存在だった美咲が、自分とは異なる価値観を持つ春一に心を動かされていく流れは丁寧で説得力がありました。
羽鳥もまた違った魅力を持つヒロインとして可愛らしく、誰か一人を雑に扱わない構成が好印象でした。
シナリオ:
文化祭という王道イベントを舞台にしながら、これまで積み重ねてきた人間関係や感情をしっかりと見せてくれる構成。
各キャラクターの苦悩や想いが自然に描かれており、「最終巻でやるべきこと」をきちんとやり切ったシナリオでした。
シリーズを追ってきた読者ほど、胸に残る場面が多い内容だったと思います。
気楽さ:
文化祭イベント中心のため、この巻単体でも楽しめる内容ではあります。
ただし最終巻ということもあり、これまでの登場人物が多数出てくるため、既刊を読んでいると満足度はさらに高まります。
それでも全体の空気は重くなりすぎず、最後まで気持ちよく読み進められるバランスでした。
後味:
とても綺麗な終わり方で、シリーズを最初から追ってきた身としても納得感のあるラスト。
無理に価値観を変えさせることなく、春一らしい選択に着地した点が特に好印象でした。
読後感が非常によく、「この物語を読んでよかった」と素直に思える最終巻です。
長さ:
物語として非常に満足感のあるボリューム。
これ以上削る必要もなく、かといって冗長でもない、ちょうど良い長さでした。
欲を言えば、もう少し彼らの日常を見ていたかったと思えるくらいの余韻が残ります。
よかった点
シリーズを通して一貫していた「おひとり様」を貫く春一の姿勢が、最終巻でも最後までブレなかった点がとても良かったです。
誰かと無理に分かり合おうとしたり、価値観を変えたりするのではなく、自分のスタンスを守ったまま周囲と折り合いをつけていく姿が、この作品らしい結末だと感じました。
また、文化祭という舞台を使って、これまで登場してきたキャラクターそれぞれの想いや関係性にきちんと区切りをつけてくれたのも好印象です。
美咲や羽鳥をはじめ、ヒロインたちが「春一を変えようとする」のではなく、「春一の価値観を理解したうえで答えを出す」展開になっている点が丁寧でした。
ラブコメとしての賑やかさを保ちつつも、最終巻として必要な整理と着地がしっかり描かれており、シリーズを追ってきた読者ほど満足度の高い内容だったと思います。
気になった点
全体として完成度は高いものの、最終巻ということもあり展開がやや駆け足に感じる場面はありました。
文化祭という舞台で多くのキャラクターが登場する分、それぞれのやり取りをもう少しじっくり見たかったという気持ちもあります。
また、春一の「おひとり様」スタンスが貫かれているからこそ、エピローグ後の日常が少しだけでも描かれていれば、余韻がさらに深まったかもしれません。
実際に読んで感じたこと
最終巻らしく、これまで積み重ねてきた人間関係にしっかり区切りをつけてくれた一冊でした。
春一の「ひとりでいたい」という価値観が最後まで一貫しており、それを無理に変えさせない着地点がとても好印象です。
周囲が変わっていく中でも、春一自身はブレずに“おひとり様”を貫きつつ、相手の気持ちは誠実に受け止める。
その姿勢が、この作品らしい優しさであり、読後に残る心地よさにつながっていました。
文化祭という王道イベントを使いながらも、派手さより「関係性の整理」に重点を置いている点が、シリーズ完結巻として非常に丁寧だと感じました。
まとめ
「ひとりでいるのが一番気楽」という信念を最後まで曲げなかった主人公・春一。
それでも周囲との関係を切り捨てるのではなく、自分なりの距離感で受け止めていく姿が印象的な最終巻でした。
文化祭という舞台で、これまで登場したヒロインたちそれぞれに“答え”を用意しつつ、物語としても綺麗に完結。
おひとり様ラブコメとして、非常に完成度の高いシリーズだったと思います。
最初から追ってきた読者ほど、納得感と満足感を得られる一冊。
「ひとりでいること」を肯定してくれるラブコメを探している人には、ぜひ最後まで読んでほしい作品です。
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<前巻のレビュー>
お前ら、おひとり様の俺のこと好きすぎだろ。3巻はこちら

