『昔クラスの女子を守れなかった俺の人生やり直し。』感想|ミステリー風導入から“力ずく解決”へ突き進む一冊
総合評価

※画像は角川スニーカー文庫(KADOKAWA)様公式サイトより引用
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作品情報
- タイトル:昔クラスの女子を守れなかった俺の人生やり直し。
- 著者:楽山
- イラスト:ギザン
- 出版社:角川スニーカー文庫(KADOKAWA)
あらすじ
夏休み明けの朝、「西府中市首無し女子高生事件」が発生する。
野間美優季と青木碧――二人の美少女が無残な姿で見つかるも、事件は手がかりを掴めないまま未解決で幕を閉じた。
そして20年後。
事件直前に二人と最後に会った人物のひとりだった杵築東悟は、死に至る病に蝕まれながら、あの日を止められなかった後悔だけを抱え続けていた。
「もしやり直せるなら、今度こそ守りたい」――その願いが届いたのか、東悟は過去へ戻り、人生をやり直す機会を得る。
二度目の人生で彼が選ぶのは、迷いのない行動。
武術の達人である叔父に師事し、力を手に入れ、運命の「あの日」を変えるために動き出す。
これは、後悔を原動力に、力ずくで未来を書き換えようとする男の物語。
詳細評価(5段階)
- 主人公:
後悔を抱えたまま人生をやり直す、という動機が強く、「今度こそ守る」という決意が物語の推進力になっているのが良かったです。
一度目の人生の痛みが“行動の理由”として明確なので、選択がブレにくく、読者としても目的を見失わずに追いかけられます。
その一方で、修行で“おかしい人たち”とやり合った結果なのか、気持ちは理解できても若干狂気寄りのテンションが見える場面があり、共感しづらい瞬間はありました。
ただ、そこも含めて「力ずくであの日を変える」方向性に説得力が出ており、突き抜けた主人公としての魅力に繋がっていたと思います。 - ヒロイン:
事件の鍵を握る存在として“守りたい理由”が主人公の動機と自然に噛み合っており、ヒロインとしての立ち位置はしっかりしています。
立ち絵も可愛く、第一印象で惹きつける力は十分あるのですが、「可愛い」という表現が繰り返されるわりに内面の描写が少なく、魅力の輪郭が掴みにくいのは惜しい点でした。
もう少し価値観や弱さ、主人公への感情の揺れが描かれていれば、読者の“推しポイント”がより強く作れたと思います。
それでもヒロインとしての魅力自体はきちんと感じられ、今後の関係性が深掘りされるなら評価はさらに上がりそうです。 - シナリオ:
未解決事件×人生やり直しというフックが分かりやすく、序盤の引きが強いのが良かったです。
タイムリープの説明も簡潔でテンポを崩さず、主人公が“救うために動き出す”までがスムーズに進むので読み始めの没入感があります。
ただし1冊で決着まで収める都合か、全体が巻き気味で、ヒロインの内面やエンディング後の描写が薄い点は不満でした。
また、謎解きのように始まるものの、解決方法は“完全なる暴力”なのでミステリーとしての快感を期待しすぎない方が良いです。簡単に言うと、小説版「龍が如く」のノリに近い印象でした。 - 気楽さ:
題材自体は重めなのに、語り口とテンポが良く、意外と読み進めやすい一冊でした。
細かな推理やロジックを組み立てるというより、「主人公がどう動いて、どう叩き潰すか」を追うタイプなので、考え込まずに読める気楽さがあります。
シリアス一辺倒ではなく、読者が息継ぎできる余白があるのも助かりました。
ただしグロテスクな表現は多めで、猟奇的な描写が苦手な人には刺さりにくい可能性があります。序盤から雰囲気が分かるので、試し読みで判断するのがおすすめです。 - 後味:
決着まで描かれるため、読み終えた直後の後味は良く、モヤモヤを残しにくい構成でした。
一方で終わり方が早く、エンディング後にどうなるのか、周囲との関係がどう落ち着くのかが気になる締め方でもあります。
“決着はついたが余韻が短い”という意味で、もう一段階の余韻パートが欲しくなる感覚はありました。
物語としてはきれいに完結しているぶん、続編が望みにくそうなのが残念で、読後の「もっと見たかった」が強く残ります。 - 長さ:
導入から目的設定、行動、決着までが一気に進むため間延びせず、体感としてはサクッと読める長さでした。
テンポ重視で読ませる分、情報の取捨選択が割り切られていて、物語の勢いはかなり強いです。
ただその反面、ヒロインたちの内面や関係性の積み重ね、そしてエンディング後の描写が薄く感じやすく、余韻の面では物足りなさが残りました。
もう少しページ数を増やして“心の変化”と“決着後の景色”が補強されていれば、満足度はさらに上がったと思います。
良かった点
主人公の「今度こそ守る」という決意が最初から最後までブレず、物語の軸として非常に分かりやすかったです。後悔が行動の原動力になっているため、読者側も迷わず主人公についていけます。やり直し系としての導入の強さがあり、掴みの時点で「続きが気になる」を作れているのが良かったです。
また、タイムリープ(人生やり直し)の説明が必要最低限に整理されていて、テンポを崩さずに物語へ入れる点も魅力でした。細かな理屈より「やるべきこと」が明確で、読み始めから行動パートに移るまでがスムーズです。重めの題材を扱いながらも、引っかかりなくページをめくれる読みやすさがありました。
そして本作の面白さは、“謎解き”よりも“力ずくで状況を変える”方向に振り切っているところにあります。解決の手段が徹底して暴力寄りなので、思考より勢いで読めるのが強みで、ある意味「小説版『龍が如く』」のような爽快感があります。結果として、難しいことを考えずに読み切れる気楽さにも繋がっていて、テンポ重視で一気読みしたい人には刺さる一冊でした。
気になった点
まず、1冊で決着まで描き切る構成のため、全体がかなり巻き気味に感じました。テンポが良い反面、ヒロインの内面や関係性の積み重ね、そしてエンディング後にどうなったのかといった“余韻”の部分が薄く、もう少し丁寧に見たかったという不満は残ります。特にヒロインは「可愛い」という描写の印象に対して、性格や価値観の掘り下げが少なく、魅力が伝わり切らないもどかしさがありました。
また、序盤は謎解きのような雰囲気で始まるものの、解決の方向性はあくまで“完全なる暴力”です。推理やミステリーの気持ちよさを期待すると、肩透かしに感じる可能性があります。どちらかというと「事件の真相を論理で追う」というより、「主人公が力で状況をひっくり返す」タイプの作品なので、そこは事前にイメージしておいた方が安心です。
さらに、グロテスクな表現が多めな点も注意が必要です。序盤から猟奇的な描写が入るため、苦手な人にはかなり刺さりにくいと思います。読めるか不安な人は、最初の数ページ(試し読み)で空気感を確認してから入るのがおすすめです。
実際に読んで感じたこと
序盤はミステリーっぽい雰囲気で始まり、「なぜ事件が起きたのか」という部分が読み進めるほどに整理されていくので、読後のスッキリ感があったのが良かったです。重い題材ではあるものの、結論まで辿り着ける構成なので、読み終えたときに一定の納得感が残りました。
一方で、主人公の強さが想像以上に“人間を超えている”レベルで、良くも悪くもリアリティは薄めです。推理で詰める展開を想像していると、最終的にパワーで粉砕していく方向へ振り切るのは予想外で、驚きのポイントになりました。
ただ、その“力ずく”が単なる俺TUEEEではなく、「目的のために努力して力を積み上げた結果」として描かれているのは好印象です。後悔から逃げずに、やり直しの人生で本気で動き続ける主人公の姿勢が物語を支えていて、読んでいて熱量を感じる一冊でした。
まとめ
『昔クラスの女子を守れなかった俺の人生やり直し。』は、未解決事件と人生やり直しを組み合わせた導入が強く、序盤のミステリー感で一気に引き込まれる一冊でした。事件の背景が整理されていくことで読後のスッキリ感があり、重い題材でもテンポよく読み切れるのが魅力です。
一方で、解決手段は推理というより“力ずくで粉砕”の方向に振り切っているため、ミステリーとしての快感を求めると方向性が違う点は注意。さらにグロテスクな描写も多めなので、苦手な人は試し読み推奨です。
後悔を原動力に「今度こそ守る」と決めて行動し続ける主人公の熱量が強く、勢いのある“リスタート×暴力解決”を楽しみたい人には刺さる作品でした。
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