ラノベ

『俺は星間国家の悪徳領主!①』感想|悪徳を目指す名君!?勘違いと善意が生むズレが面白い一冊

千代瀬

総合評価

※画像はオーバーラップ文庫様公式サイトより引用

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作品情報

タイトル:俺は星間国家の悪徳領主! ①
著者:三嶋与夢
イラスト:高峰ナダレ
出版社:オーバーラップ文庫

あらすじ

現代日本で理不尽な裏切りに遭い、悲惨な最期を迎えた主人公。死後、謎の「案内人」に誘われ異世界に転生するが、その先は荒れ果てた辺境領を抱える貴族の家だった。
過去の経験から「善人は損をする」と信じ、今度こそ“悪徳領主”として生きることを決意する主人公だったが、根っからの善人ゆえに徹底した悪行には及べず、結果として民に優しい政策を連発。
本人の意図とは裏腹に、いつの間にか「名君」と称えられるようになってしまう――。
ズレた信念と実際の行動がかみ合わない、痛快な転生コメディの開幕!

詳細評価(5段階)

主人公:
悪徳領主を目指すものの、どうしても本質的な善良さが滲み出てしまう主人公。
本人の意図と結果がズレていく様子がコミカルで、読者目線では好感が持てる一方、本人の行動はやや空回り気味な部分も。
今後の成長や“悪徳”への姿勢の変化にも期待したい。

ヒロイン:
メインヒロインは領主の補佐としてしっかり支えつつ、主人公のことを第一に考える誠実なキャラクター。
自分を犠牲にしてでも主人公を守ろうとする姿勢が健気で好印象。

シナリオ:
テンプレート的な転生導入と“勘違いで評価が上がる”構成はやや王道だが、領地経営や周囲との関係の構築が丁寧で、先を読みたくなる要素が詰まっている。
起承転結がしっかりしており、シリアスと笑いが交互に入る構成で、読んでいて飽きない。

気楽さ:
主人公が苦しみながらも何だかんだうまくいく構成で、安心して読める。
ただし、敵サイドの行動には残虐な描写もあり、嫌悪感を持つ読者もいるかもしれない点には注意。

後味:
「悪徳を目指して善政を敷いてしまう」という矛盾の末に、“名君”として慕われる姿が気持ちよく、読後感もさっぱり。
しっかりと案内人への復讐も果たしており、カタルシスがある。
前世のつらい経験と現世でのギャップが少しずつ埋まっていく流れも好印象。

長さ:
テンポは軽快で中だるみも少ない。星間国家という壮大な舞台ながら、世界観もわかりやすく整理されており、シリーズへの導入として良バランス。

よかった点

悪徳領主を目指すも、つい善行を重ねて名君と称されてしまう――そんな主人公のズレた信念と実際の行動がコミカルで面白く、読んでいてクセになる魅力がありました。
また、主人公は騙された立場でありながらも常に努力を続けており、前世で人間不信になった反動から「誰にも頼らずに解決しようとする姿勢」が自然と身についています。
その行動が周囲には「領民思いで自ら前線に立つ立派な領主」と誤解されていく展開が巧妙で、読み進めるほどに笑いと驚きが重なる作品でした。

気になった点

気になったのは、宇宙規模の星間国家を舞台にしているため、登場する勢力や用語が多く、慣れるまでに少し時間がかかる点です。
また、敵側が“完全な悪”として描かれている関係で、残虐な描写がやや多く、人によっては読む際に引っかかるかもしれません。
作品全体としては明るいトーンですが、こうした要素に注意が必要だと感じました。

実際に読んで感じたこと

悪役の主人公の物語に興味があって手に取りましたが、いい意味で期待を裏切られる内容でした。
転生先の星間国家では悪徳領主が横行しており、主人公が“悪ぶって”もむしろ改善と受け取られてしまう――その噛み合わなさが絶妙で笑いを誘います。
また、騙された原因である案内人にしっかりお仕置きが入る展開もあり、シリアスとコメディのバランスがよく取れた作品だと感じました。

まとめ

悪徳領主になろうとする主人公が、なぜか善政を敷いて名君扱いされてしまうという“勘違いコメディ”が光る本作。
努力家で人間不信気味の主人公が前世の反省を踏まえて動くものの、読者には明らかに「いい人」に見えるズレが面白さを生んでいます。
星間国家という壮大な舞台設定や残虐な敵の描写などやや重い部分もありますが、それらを補って余りあるテンポの良さと読後感の爽快さがありました。
悪役視点や勘違いものが好きな方、宇宙規模の転生劇を気軽に楽しみたい方におすすめの一冊です。

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