『エロ漫画の悪役に転生した俺が、寝取らなくても幸せになる方法』感想|寝取らないつもりが運命を変えた転生ラブコメ
総合評価

※画像は角川スニーカー文庫様からより引用
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作品情報
タイトル : エロ漫画の悪役に転生した俺が、寝取らなくても幸せになる方法
著者:みずがめ
イラスト:ねしあ
出版社:角川スニーカー文庫
あらすじ
目が覚めると、主人公はなんと“エロ漫画の悪役”――郷田晃生に転生していた。
この郷田という男、作中では主人公の彼女はもちろん、登場するヒロイン全員を寝取ってしまうという、倫理観ゼロの最低キャラ。最初は絶望するものの、まだ物語は序盤。ヒロインの日葵に手を出す前であることに気づいた主人公は、前向きに「普通の高校生としてやり直そう」と決意する。
だが、今の郷田は“悪役らしくない”。
そのギャップがむしろ魅力となり、気づけばヒロインたちが次々と惹かれていく──。
「悪役だけど寝取らない」──そんな新しい選択を描く、ちょっと危うくて優しい転生ラブコメ。
詳細評価(5段階)
主人公:
元となる郷田の肉体スペックが高く、そこに転生者としての善人な性格が加わることで、見た目は怖いが中身は誠実というギャップのあるキャラクターになっている。完璧すぎず、ちゃんと欠点も描かれており人間味があるのが魅力的。ヒロインとの距離を置こうとしながらも、困っている相手を助ける行動が自然に描かれていて好印象だった。
ヒロイン:
メインヒロインは日葵だが、もう一人の羽彩がとても魅力的で印象に残る。登場するヒロイン全員にそれぞれ個性があり、キャラクター造形はしっかりしている。ただ、特殊な状況下とはいえ、日葵が出会って会話を交わしただけで主人公にアプローチを仕掛ける展開はやや唐突。もう少し心の揺れや迷いを描いてほしかった。
シナリオ:
現代の“寝取り悪役”に転生し、意図せずハーレム展開になってしまうという、王道ながら読みやすい構成。破滅を防ぐために奔走するタイプではなく、二度目の高校生活を純粋に楽しもうとする姿勢が新鮮で、転生要素と青春要素のバランスが取れている。ただ、元の郷田があまりに問題人物なため、「主人公がいなくても破局していたのでは?」と感じる部分もあった。
気楽さ:
現代の学園を舞台にしているため、複雑な設定がなく気軽に読み進められる。文化祭や体育祭といった定番イベントがしっかり描かれており、学生時代の懐かしさを感じる場面も多い。テンポも軽快で、深刻になりすぎないバランスが心地よい一冊だった。
後味:
この1巻で綺麗に物語がまとまっており、最後まで気持ちよく読み切れる。全員が完全に救われるわけではないが、それぞれのキャラクターに区切りがついていて満足感がある。読後にほんの少しの切なさと穏やかさが残る、程よいエンディングだった。
長さ:
全体のボリュームはやや少なめで、テンポが良い分だけ内容が軽く感じてしまう部分もあった。ページ数自体が短めなうえに、エピローグ後に短編と別作品のお試し版が収録されており、実質的な本編の厚みが薄い印象。個人的にはお試し部分を削って価格を抑えるか、同じボリュームでしっかり完結させてほしかった。
良かった点
テンポの良さが際立っており、時系列の流れが明確なためストレスなく読み進められる構成になっている。会話や展開の切り替えも軽快で、物語全体がサクサク進む心地よさがある。それぞれのヒロインがしっかり個性を持って描かれており、どのキャラクターにも魅力を感じられる点も印象的。
何より、郷田が自分だけで完結せず、周囲の人々を巻き込みながらも“より良い方向に進もう”と行動する姿が物語の軸として心地よく、転生ものの中でも前向きな空気を生み出していた。
気になった点
真の主人公(原作側の主人公)の情けなさが少々目立ち、良くない面ばかりが強調されていた印象を受けた。物語構造上、郷田との対比を描くために仕方ない部分もあるが、それでももう少し“主人公らしい芯”や成長が描かれていれば、物語全体に深みが出たはず。結果的に、郷田がいなくても自然に破局していたように思えてしまい、転生設定の必然性がやや薄く感じられた。
また、本編のボリューム自体が他作品に比べて少なく、後半には別作品のお試し版が収録されているため、実際の読書量に対してやや割高に感じる点には注意したい。
実際に読んで感じたこと
メインヒロインの日葵も可愛らしかったが、個人的には羽彩の存在がとても印象に残った。郷田が性格を変える前からずっと寄り添い、変わった後も離れずに支え続ける――そんな一途さと健気さが光る魅力的なキャラクターだった。
もし続編があるなら、ぜひ彼女の視点やエピソードをもっと掘り下げてほしいと思う。
また、主人公だけが幸せになるのではなく、周囲の登場人物たちも巻き込みながら全体が前向きな方向へ進んでいく構成が心地よく、この作品ならではの魅力を感じた。
まとめ
“悪役転生”という刺激的な題材ながら、読後には不思議と温かい気持ちが残る一冊。
テンポの良い展開と魅力的なキャラクターたちによって、重くなりがちなテーマを軽やかに描いているのが印象的だった。特に、主人公・郷田の「悪役だからこそ選ぶ優しさ」が物語全体に深みを与えている。
ラブコメとしての読みやすさと転生ものとしての新鮮さを両立した、ちょっと変わった切り口の作品。刺激的なタイトルに反して、意外と真っ直ぐで人間味のある青春ストーリーを楽しめる。
ただし、巻末には他作品のお試し版が含まれており、実際の本編ボリュームはやや少なめなので購入時は注意したい。
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