極めて傲慢たる悪役貴族の所業【感想・レビュー】努力で変わる悪役転生もの
総合評価

※画像はKADOKAWA様より引用
作品情報
タイトル:極めて傲慢たる悪役貴族の所業
著者:黒雪 ゆきは
イラスト:魚デニム
出版社:角川スニーカー文庫(KADOKAWA)
あらすじ
ファンタジー小説の悪役キャラに転生した主人公。
その転生先は、努力を怠り才能に溺れるだけの悪役貴族ルークだった。彼は物語の中で、主人公に敗北し読者にザマァ展開を提供するだけの存在。
しかしこの世界を知っていた主人公は、ただ同じ運命をたどるのではなく「自分なりのハッピーエンドを迎えたい」と考える。そして、せっかく転生したからにはと魔法や剣術の修練に励み、才能を努力で磨いていく。
努力を積み重ねる天才の姿は周囲の人々にも影響を与え、やがて物語は少しずつ“本来のルート”から外れ始めていく──。
詳細評価(5段階)
主人公:
ルークは本来“才能に甘えて堕落する悪役”だったが、転生者として努力を重ねる姿に変化。しかし、本来の性格が残っているため、傲慢な言葉や態度に変換されてしまうのが面白い。魔法や剣術を真面目に鍛えることで天才性がさらに伸び、努力の天才としての一面も見せていく。
ヒロイン:
ヒロインは複数登場し、主人公の努力の影響で本来のストーリーから乖離していく。さらに登場人物の多くが強烈な個性を持っており、やや特殊なキャラが多いのも特徴。恐らく今後はハーレム展開になると思われるが、この癖のあるヒロインたちが集まった時にどうなるのか、少し心配にもなる。
シナリオ:
“破滅確定の悪役ルート”を努力によって覆していく筋書きは王道ながらも爽快。傲慢なキャラだった主人公が努力することで周囲に影響を与え、世界そのものが変化していくのが面白い。周囲を変えていく過程がじっくり描かれており、読み応えがある。
気楽さ:
主人公のスキルや能力が高く、弱点が見えにくいため基本的に負ける姿は描かれない。ただし、今後はピンチ展開もあるかもしれない。仲間となるヒロインたちも能力が強いため、戦闘は派手ながら安心感があり、意外と気楽に読める。
後味:
物語の結末ではルークが努力の成果を発揮し、傲慢な性格でありながらも実力主義の世界観ゆえに周囲から嫌われてはいない。最後は次巻が気になる引きで終わるものの、全体の読後感は前向きで悪くなかった。
長さ:
序盤は世界観や魔法の説明、キャラクター紹介が多く、導入としては仕方ない部分もある。ただし、物語自体はテンポよく進むため、全体としては少し物足りなく感じた。もう少しボリュームがあっても良かったと思う。
良かった点
主人公が「どうせなら魔法の世界を存分に楽しみたい」と前向きに挑戦し、努力を重ねて成長していく姿が印象的だった。その姿勢に触発され、周囲のキャラクターたちも奮起していく展開は、努力が連鎖していくようで読んでいて気持ちが良い。
また、転生先のルークの人格が完全には消えておらず、時折見せる傲慢な態度がギャップとなって物語にユーモアを与えていた。努力型主人公の真面目さと、元のキャラクター性からにじみ出る傲慢さの両面が共存している点は、他作品にはない面白さとなっている。
気になった点
ヒロインを含め、登場人物の多くがかなり癖の強い性格をしており、人によっては受け入れにくいかもしれない。ドM気質やヤンデレ要素といった特徴を持つキャラクターも多いため、そうした属性が好きな人には楽しめるが、苦手な人には合わない部分もある。
実際に読んで感じたこと
悪役転生ものということで手に取ったが、主人公の人格が残っているために傲慢さから逃れられないという設定が面白かった。他作品では主人公が強さで無双していく展開が多い中、今作では努力する主人公に触発されて周囲の人々も努力を重ねていくという構図が新鮮で良かった。物語が気になるところで終わっているため、続きがどう展開していくのか今後が非常に楽しみだ。
まとめ
悪役転生ものとしての王道を押さえつつも、主人公が努力することで周囲に影響を与え、物語が大きく変わっていく点が本作の魅力。傲慢な性格が残る主人公のユニークさや、個性的すぎる仲間たちの存在も含め、今後の展開に期待を持たせる一冊だった。
悪役のまま仲間を増やしていく展開が好きな人には特におすすめできる。
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