『陰の実力者になりたくて!4』感想|ローズの決断と崩壊後の日本編が熱い!

千代瀬

総合評価:

※画像はKADOKAWA様公式サイトより引用

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作品情報

  • タイトル:影の実力者になりたくて!04
  • 著者:逢沢大介
  • イラスト:東西
  • 出版社:KADOKAWA

あらすじ

かつての学園の先輩であり王女でもあるローズにまつわる事件が前半の中心。自らの宿命に抗おうとする彼女に、主人公シド=シャドウは“陰の実力者”として干渉する。一方で、ローズを巡る王国の陰謀も静かに動き出す──。

そして後半では、シドが転生前に過ごしていた“日本”から時間が経過した、異質な世界へと飛ばされる。見慣れたはずの街は荒廃し、魔物が徘徊する異様な光景が広がっていた。だが、そこでも彼は迷うことなく“陰の実力者”としてのムーブを貫き、思う存分に暗躍する。

勘違いから始まった陰の物語は、ついに“かつての世界”にまで影を伸ばす。妄想が現実を凌駕する、痛快でシリアスな第4巻。

詳細評価(5段階)

主人公:
“陰の実力者ごっこ”を貫くシドは、今巻でも変わらずマイペースで状況を誤解しながらも、なぜか事態を解決してしまう絶妙なキャラクター。ブレない信念と演技力(?)で、異世界のような日本でも自分の理想を突き進む姿は痛快。ただし、相変わらず共感しにくい場面もあり、人を選ぶキャラではある。

ヒロイン:
ローズが本巻の中心となり、彼女の内面や苦悩、覚悟が丁寧に描かれている。真面目で芯のあるキャラクターとして、読者の印象に強く残る内容だった。シャドウガーデンの面々も個性豊かに登場し、華やかさを加えている。

シナリオ:
ローズ編と“日本風異世界”編の2部構成。ローズの決断は切実で、後半では世界観を拡張する要素がふんだんに盛り込まれている。陰の実力者という妄想と現実のズレが面白く、緩急ある展開が印象的。

気楽さ:
前半はローズの葛藤や政治的な駆け引きが中心でやや重め。後半になると、シドの“勘違い無双”が炸裂し、テンポ良く軽めに楽しめるパートが増える。読者の好みによって受ける印象が分かれる構成。

後味:
ローズ編も日本編もこの巻で一区切りついており、読後感はすっきりしている。ただしヒロインとの関係性についてはまだ明確ではなく、次巻でどう動くかがやや不安要素として残る。

長さ:
展開の密度と情報量が高く、満足度は十分。後半の日本編は独特の雰囲気と用語が多く登場し、初見では少し混乱するかもしれないが、シリーズファンであればしっかり楽しめる内容。

良かった点

ローズ編では、彼女が抱える責任や苦悩が丁寧に描かれており、これまでの巻以上にキャラクターとして深みが増した印象でした。芯の強さと葛藤がしっかり伝わってきて、今後の展開が楽しみになる内容でした。

そしてやはり後半、日本編での“陰の実力者ムーブ”は圧巻。シドが何も知らずに行動しているのに、周囲が勝手に意味を見出してしまう勘違い劇場が炸裂していて笑える場面も多く、シリーズらしさを存分に味わえました。

異なる雰囲気の2編が一冊に収まっていて、緩急のバランスが絶妙だったのも良かった点です。

気になった点

後半の日本編については、舞台や設定がやや複雑で、序盤は状況を把握するのに少し時間がかかりました。崩壊した日本のような世界、魔力の扱い、敵勢力の正体など、読み進めるうちに理解できる要素もありますが、もう少し説明や導入が丁寧だと入りやすかったかもしれません。

また、せっかく緊張感のある設定だったにもかかわらず、結局はシドの圧倒的な実力で一気に片がついてしまい、やや拍子抜けな印象を受けた場面もありました。シリーズの持ち味ではありますが、今回は少しカタルシスが軽く感じたかもしれません。

実際に読んで感じたこと

ついにローズ先輩にスポットが当たる巻ということで、彼女の物語を楽しみにしていた読者には見どころ満載の展開でした。ただ、ローズの置かれた状況はなかなか過酷で、偶然が重なって何とか落ち着いたものの、もう少し報われてほしい気持ちも残りました。その分、ラブコメとしてのやりとりはよく描かれていて、キャラ同士の関係性が一層深まった印象です。

後半は異世界転生モノでは珍しい「転生前の世界に戻る」展開があり、崩壊後の日本という舞台設定も新鮮でした。もしかすると、シドの転生に何か大きな裏があるのかも?という予感を持たせてくれる展開で、今後のストーリーにも期待が高まります。

全体としては、これまでのシリーズ同様にテンポ良く、笑えて、ちょっとシリアスで、やっぱり面白い──そんな「陰の実力者になりたくて!」らしさをしっかり楽しめる一冊でした。

まとめ

『陰の実力者になりたくて! 04』は、ローズ先輩に焦点を当てた前半と、崩壊後の“日本”を舞台にした後半という二部構成で展開され、シリーズとしての新たな一面を見せてくれた巻でした。

ローズの苦悩や葛藤、そしてシドの“陰の実力者ムーブ”が絶妙に絡み合い、物語に緩急と深みを与えています。また、後半の展開では、これまであまり触れられてこなかった転生の背景にも何かが隠されていそうな気配があり、シリーズ全体の伏線としても興味を引かれました。

相変わらず主人公の無自覚な強キャラムーブと、それに対する周囲の勘違いが笑いを生み、シリアスとコメディのバランスが心地よい一冊です。次巻ではさらに世界観が広がりそうで、今後の展開にも期待が高まります。

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<前巻のレビュー>
👉 『陰の実力者になりたくて!03』はこちら

<次巻のレビュー>
👉『陰の実力者になりたくて!05』はこちら

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