『この△ラブコメは幸せになる義務がある。4』感想|三角関係に終止符を打つ、優しさあふれる最終巻
総合評価

※画像はKADOKAWA様より引用
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作品情報
- タイトル:この△ラブコメは幸せになる義務がある。
- 著者:榛名千紘
- イラスト:てつぶた
- 出版社:電撃文庫(KADOKAWA)
あらすじ
凛華の秘密を知ったことで距離が縮まり、麗良とも素直に話せるようになった主人公。気づけば三人の関係は、遠慮や誤魔化しのない“本当の三角関係”へと進んでいた。
それぞれが少しずつ相手を意識し、照れたり悩んだりしながらも、どこかあたたかい空気が流れる日々が続いていく。
そんな中、凛華が大きなコンサートに出場することが決まり、三人の関係は思わぬ方向に動き出す。ステージに立つ凛華を応援したい気持ちと、麗良のまっすぐな想い。そして、主人公自身が抱える答え──。
誰と誰が結ばれるのか。この三角関係にどんな形で区切りがつくのか。
笑顔と少しの切なさが混ざり合う、前向きな読後感の最終巻。
詳細評価(5段階)
主人公:
相変わらず自虐的な面はあるものの、今巻では自分の気持ちときちんと向き合おうとする姿勢が好印象。
凛華と麗良、どちらの想いもぞんざいに扱わず、最後まで誠実であろうとするスタンスが「らしさ」と成長の両方を感じさせます。
特にコンサート関連の場面では、受け身だけではなく“支える側”として動く一面が見えたのも良かった点。
読者としても「ちゃんと決着をつけてほしい」と自然と背中を押したくなるタイプの主人公でした。
ヒロイン:
凛華と麗良、それぞれの“好き”の形が最終巻でいちばん鮮やかに描かれていた印象。
凛華は音楽を通して揺れ動く恋心が自然に絡み合い、コンサート前後の描写は特に胸に迫ります。
麗良はいつも通りの明るさの裏に、しっかり不安や葛藤を抱えているのが伝わり、そのバランスが絶妙。
どちらのヒロインも「この子を応援したい」と素直に思える仕上がりで、三角関係ものとしての満足度はかなり高かったです。
シナリオ:
ここまで積み重ねてきた関係性を丁寧に回収しつつ、コンサートという“クライマックスの舞台”へ向けて盛り上げていく流れが気持ちいい。
日常パートのわちゃわちゃした掛け合いと、恋愛面の揺れや決断パートのバランスも良く、最後までテンポよく読み進められます。
誰が選ばれるのか、どんな答えを出すのかという一点に向かって物語が収束していくので、自然とページをめくる手が止まらなくなる構成。
ラブコメとしても、シリーズ完結巻としても、しっかり“ゴールまで走り切った”と感じられる内容でした。
気楽さ:
三角関係の決着を描く巻ではありますが、全体の雰囲気はあくまでこのシリーズらしい“軽やかラブコメ寄り”。
シリアス一辺倒にならず、日常のやり取りや小さなボケとツッコミがこまめに挟まれるため、重くなりすぎません。
恋愛の答えを出す場面でも、読者を突き放すような暗さや後味の悪さがないのが嬉しいところ。
「最終巻だけど、気負わず一気読みできる」ほどの読みやすさでした。
後味:
誰と誰が結ばれるのか、その結果に賛否はあっても、「この物語としてはこれで良かった」と感じられる綺麗な締め方。
三人の関係を無理に引き延ばさず、しっかり答えを出した上で未来へ向けた前向きな余韻を残してくれます。
ラブコメ最終巻でありがちな“駆け足”や“説明不足”も少なく、読後にモヤモヤが残りにくい構成。
読み終えたあと表紙を見返したくなるような、気持ちの良いラストでした。
長さ:
三角関係の整理、コンサート本番、各キャラの心情描写と、やるべき要素がしっかり詰まっているのに冗長さはほとんどありません。
日常パートと本番パートの配分も良く、緩急がついた読みやすいボリューム感。
「もっと読みたい」と思いつつも、シリーズとしてはこのくらいがちょうど良い長さだと感じられます。
1〜4巻を通して読むと、一つの物語として綺麗にまとまるよう計算されている印象でした。
良かった点
これまで積み重ねてきた時間や関係性がしっかり実を結び、互いを大切に思う気持ちが自然と行動に表れていたのがとても良かったです。
気軽に言い合える関係性の中にも確かな愛情があり、遠慮せずに相手の心に踏み込んで支えようとする姿が温かい。
誰かが困ったときに、迷わず手を差し伸べる“優しさの連鎖”が物語全体に行き渡っていて、このシリーズらしい魅力が濃く感じられました。
最終巻でもそのバランスが崩れず、読んでいて心地よい関係性が最後まで貫かれていたのが印象的でした。
気になった点
大きく気になる部分はありませんが、あえて挙げるなら“その後”の描写がもう少し見たかったところです。
関係が決着したあと、三人がどんな距離感で日常を過ごすのかをもう少しだけ描いてくれると、最終巻としての余韻がさらに強まったかもしれません。
物語としては綺麗に締まっているので不満ではありませんが、読者としての欲を言えば、エピローグ的な生活風景をもう少し覗いてみたかったです。
実際に読んで感じたこと
シリーズを通して築かれてきた関係が最終巻でしっかりと実り、読んでいて温かい気持ちになれました。
三角関係というテーマながら、誰かを不必要に傷つけることなく、丁寧に気持ちが整理されていく運びはこの作品らしい優しさがあったと思います。
凛華のコンサートを軸に進む物語は、恋愛と成長が自然に重なっていて、最後までテンポよく読めました。
それぞれが悩みながらも前に進もうとする姿が心地よく、最終巻として満足度の高い一冊でした。
まとめ
三角関係の行方にしっかり決着をつけつつ、登場人物たちの優しさや成長が丁寧に描かれた最終巻でした。
コンサートを中心に感情が交差する展開は読み応えがあり、シリーズを通して積み重ねてきた関係性がきれいに回収されています。
恋愛面のドキドキと、日常の温かさのバランスが最後まで心地よく、ラブコメとしても締めとしても満足できる内容でした。
最終巻としての余韻も十分で、読み終えたあとに優しい気持ちになれる一冊です。
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<前巻のレビュー>
👉この△ラブコメは幸せになる義務がある。③はこちら

