『影の実力者になりたくて！』3巻 感想レビュー｜妄想と現実が奇跡的に噛み合う痛快展開！
千代瀬
千代瀬の冒険
『ゲーム世界のモブ悪役に転生したのでラスボスを目指してみた』感想｜誤解が連鎖する勘違い成り上がりコメディ！
千代瀬
総合評価
※画像はGA文庫様より引用
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作品情報
タイトル：ゲーム世界のモブ悪役に転生したのでラスボスを目指してみた ～なぜか歴代最高の名君と崇められているんですが、誰か理由を教えてください！～
著者：八又ナガト
イラスト：もきゅ
出版社：GA文庫
あらすじ
目を覚ますと、そこはかつて自分がプレイしていたゲームの世界――しかも転生先は、ストーリー序盤で処刑されるモブ悪役の「クラウス」。
いずれバッドエンドが待つことを知る主人公は、「だったらせめて最後にド派手な見せ場を作ってやろう」と、ラスボスを目指す道を選ぶ。
だが、悪逆非道を演じるつもりが、なぜか周囲の誤解を呼びまくり、やることなすこと“名君ムーブ”と受け取られてしまう。
配下からは忠誠を誓われ、民からは慕われ、気づけば「歴代最高の領主様」と崇められる日々に。
思惑と評価がどこまでもすれ違う、全力空回りな“勘違い系成り上がりコメディ”、ここに開幕！
詳細評価（5段階）
主人公：
人生は“おまけステージ”程度に考え、見事な死に様を演出しようとするその姿勢はもはや狂人。
悪役になりきろうとするも、行動がことごとく善行と勘違いされる展開がコミカルで、読んでいて飽きない。
ただ、クラウス自身が“自分の評価を下げること”しか考えておらず、周囲の人物を意識しない点はややマイナス。
ヒロイン：
登場人物は多く、ヒロイン候補も複数登場。ただし紹介程度にとどまり、クラウスとの会話や関係構築はまだ浅め。
“誤解され力”に振り回される彼女たちのリアクションは面白いものの、人数が多いぶん主人公への盲信が早すぎるのがやや気になる。
シナリオ：
ゲーム世界への転生と破滅フラグ回避という定番設定に対して、「ラスボスを目指す」という逆張りの動機が新鮮。
物語は短話形式でテンポよく進み、クラウスの行動と周囲の受け取り方の“ズレ”を毎回楽しめる構成になっている。
気楽さ：
基本はギャグ・コメディベースで、テンポも軽快。
クラウス自身がかなり強いので、致命的なピンチもなく、勘違いと空回りを楽しむにはちょうどよいバランス感。
後味：
「主人公だけが空回りしている」という構図が一貫していて、読後感は軽やか。
クラウスの評価が勝手に上がり、周囲との関係が少しずつ変化していく様子が心地よい。
長さ：
文量は標準的だが、登場人物や場面転換が多く、序盤はやや情報量の多さに戸惑うかもしれない。
とはいえテンポが良いため、慣れれば最後まで一気に読める構成になっている。
良かった点
“ラスボスを目指すモブ悪役”という逆張りの動機と、勘違いが連鎖してクラウスの評価だけが上がっていく構図がとにかく面白く、毎話ごとのズレ具合に笑わせられました。短話形式でテンポよく進むので、サクサク読める点も好印象。登場人物が多いわりにキャラの描き分けもはっきりしていて、勘違いを前提にした会話劇のやりとりも読み応えがあります。
気になった点
クラウスは自分の評価を下げるためなら多少の犠牲も厭わない考え方をしており、その姿勢がギャグとして描かれている一方で、他人への配慮が薄く感じられる場面もあります。価値観の違いに敏感な読者にはやや引っかかる部分があるかもしれません。
実際に読んで感じたこと
勘違いが勘違いを呼び、主人公だけが空回りし続ける展開はテンポもよく、最初から最後まで笑いながら読めました。
クラウスのズレた倫理観や極端な行動は、やっていること自体は“悪人”としての行動でもあるため、私には少し抵抗がありました。
また、登場人物の数が多い分、それぞれの関係性がもう少し描かれると感情移入もしやすかったかもしれません。
テンポ重視の構成の中にも、あと一歩だけ“じっくり描写”が欲しくなる場面はありました。
まとめ
勘違いコメディ×異世界転生というジャンルの中でも、本作は「モブ悪役がラスボスを目指す」という設定と、全力で評価を下げようとする主人公の狂気が際立った一作です。
クラウスの思惑とは裏腹に周囲からは名君と崇められていく展開がテンポよく描かれ、読みやすさと笑いの両立がしっかりしています。
倫理観のズレや登場人物の描写の薄さに引っかかる部分もあるものの、軽快なギャグと誤解の連鎖を楽しむ作品としては十分に魅力的。
シリアスよりもコメディ重視の異世界転生モノを探している方には、気楽に読めておすすめできる一冊です。
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