『お前ら、おひとり様の俺のこと好きすぎだろ。③』感想|夏休みイベントで賑やかに描かれる誠実系おひとり様ラブコメ

千代瀬

総合評価

※画像はKADOKAWA様公式サイトより引用

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作品情報

タイトル:お前ら、おひとり様の俺のこと好きすぎだろ。
著者:凪木エコ
イラスト:あゆま紗由
出版社:ファンタジア文庫(KADOKAWA)

あらすじ

「一人でいるのが一番気楽」――そう信じていた主人公・春一。
学園の完璧ヒロイン・美咲に気に入られたことで、静かな日々は一変してしまう。
さらにクラスメイトの羽鳥からも好意を寄せられ、次々と恋愛フラグが立っていく中、彼は今日も必死に“おひとり様”を貫こうとしていた。

季節は夏休み直前。ようやく一人時間を満喫できると思いきや、過去に助けた少女・白星が再登場。
春一に一目惚れしていた彼女に誘われる形で、海やBBQといったリア充イベントに巻き込まれていく。
騒がしくも温かい日々の中で、春一が選ぶのは孤独か、それとも――?

詳細評価(5段階)

主人公:
今回も「おひとり様」を貫こうとする春一だが、周囲からの好意を避けきれず、次々と人に絡まれてしまう。
それでも以前より態度が柔らかくなっており、口では拒絶しつつも困っている人を放っておけないお人好しな一面が目立つように。
鈍感ではなく、相手の気持ちを理解した上で「それでも一人がいい」と自分の意思を貫く姿が好印象で、芯の通った主人公として魅力が増している。

ヒロイン:
今巻のメインは新ヒロイン・白星だが、これまで登場してきた美咲や羽鳥の存在感も健在。
恋愛感情を抱くヒロインが増えたことで、互いの行動がより積極的になり、作品全体に賑やかさと恋の駆け引きが生まれている。
特に初期ヒロインたちの成長が見られるのが良く、シリーズを追ってきた読者には嬉しい展開となっている。

シナリオ:
王道の夏休みイベントを中心に据えた物語構成で、定番の海やBBQ、水着回などが登場する。
しかし、そんな中でも「一人で過ごしたい」主人公・春一のマイペースな行動がコミカルで、ラブコメとしてテンポよく楽しめる。
恋愛模様の中にもキャラの想いの変化が描かれ、軽さと深さのバランスが取れた巻だった。

気楽さ:
学生ならではの夏休みイベントが多く、明るく軽快な雰囲気で最後まで気楽に読める。
周囲がハイテンションな中でも春一が常にマイペースを崩さないため、読者も落ち着いて物語を追える構成。
日常×恋愛の緩やかな空気感が続いており、シリーズ通しての安定感が感じられる。

後味:
全体的に読み心地はよいが、ラストで次巻への伏線が投下され、やや余韻を残す終わり方。
気になる展開が多く、読後に「早く続きが読みたい」と思わせる構成になっている。
明確な締まりはないが、シリーズ物としては次への期待を高める良いラスト。

長さ:
内容量はラノベとして標準的で、テンポよく進むため中だるみはない。
イベントが多く、それぞれのシーンがしっかり印象に残るためボリューム感は十分。
軽快な展開とまとまりのよさで、最後までスムーズに読める構成だった。

よかった点

それぞれのヒロインの想いに対して、春一が面倒に感じながらもきちんと向き合う姿勢がよかったです。
「おひとり様」を貫くと言いつつも、相手を傷つけないように配慮したり、助けが必要なときには必ず手を差し伸べるなど、誠実さがしっかり描かれていました。
また、そんな春一を信頼して支えるヒロインたちの描写も温かく、関係性の深まりを感じられるのが印象的でした。
恋愛だけでなく、登場人物たちの“信頼と理解”が積み重なっていく様子が、この巻の一番の魅力だと思います。

気になった点

主人公の周囲以外のキャラクターの性格があまり良くない点が少し気になりました。
特に主人公に対して当たりが強かったり、空気を読まない発言をするキャラが多く、読んでいて不快に感じる場面もありました。
最終的には春一の行動によって改善していくとはいえ、もう少し序盤から落ち着いた描写があれば、物語全体がより心地よく読めたと思います。

実際に読んで感じたこと

シリーズを通して“おひとり様主義”を貫いてきた春一ですが、今回はより人との関わりが増え、キャラクター同士の関係性が一段と深まっていました。
相変わらずのマイペースさを保ちながらも、困っている人にはしっかり手を差し伸べる姿勢が魅力的で、読んでいて安心できる主人公だと改めて感じます。
また、ヒロインたちの掛け合いがさらに明るくテンポ良くなっており、夏のイベントにぴったりの爽やかな雰囲気で読後感も軽やかでした。

恋愛の進展がありながらも、春一が“自分のスタイル”を崩さずにいるのがこの作品らしい魅力であり、彼の誠実さがシリーズの軸を支えているように思います。
笑いあり、甘さありの心地よい一冊で、読めばシリーズのファンとして次巻への期待が高まる内容でした。

まとめ

3巻も安定した面白さで、“おひとり様”を貫く春一の魅力がしっかり描かれた一冊でした。
巻を重ねるごとにヒロインたちとの関係が深まり、恋愛的な動きも活発になりながら、それでも自分の信念を曲げない主人公の姿勢が印象的です。
夏休みを舞台にしたイベントの数々は明るくテンポが良く、シリーズの中でも特に読みやすい巻でした。

一方で、周囲のキャラの性格にやや癖があるため、人によっては不快に感じる部分もあるかもしれません。
それでも春一の誠実さと、ヒロインたちの信頼関係がしっかり描かれていることで、全体として心地よい読後感が残ります。
恋愛コメディの中に“人との距離感”というテーマを自然に織り込んだ良作で、シリーズファンにはぜひ読んでほしい一冊です。

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<前巻のレビュー>
お前ら、おひとり様の俺のこと好きすぎだろ。2巻はこちら

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