『洗脳スキルで異世界無双!?②』感想|ヒロインたちの信頼と陰謀が動く、教会編スタート
総合評価

※画像はオーバーラップ文庫様公式サイトより引用
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作品情報
タイトル:洗脳スキルで異世界無双!?① ~スキルがバレたら処刑されるので健全誠実に生きようとしたら、なぜか美少女たちに愛されている件について~
著者:KT
イラスト:おやずり
出版社:オーバーラップ文庫
あらすじ
〈洗脳〉スキルの力を隠しながら、穏やかに過ごしていたヒュー。
しかし、国王の容体悪化をきっかけに再び波乱が訪れる。
治療に呼ばれた〈聖女〉レクティ、そして教会で出会ったもう一人の聖女・ロザリィ。
“救うための力”を持つ二人が抱える苦悩と、彼女たちを利用しようとする陰謀。
その狭間で、ヒューは自らのスキルをどう使うべきか葛藤する。
――健全に生きたいだけなのに、世界がそれを許してくれない。
信念と優しさで道を切り開く、誠実系異世界ファンタジー第2巻!
詳細評価(5段階)
主人公:
対象は一人までではあるが、誰でも自在に操れる〈洗脳〉スキルを使いピンチを乗り越えていく。
ただし、このスキルは個人にしか知られておらず、発覚すれば処刑されるという危険を伴うため、使用には常に制限がかかっている。
その理由は理解できるものの、本当に困っている人を「バレるから」と見捨ててしまう場面もあり、個人的には少しマイナス。
もう少し“バレないよう工夫して助けようとする姿勢”が見たかった。
ヒロイン:
今回は〈聖女〉スキルを持つレクティが中心となる物語。
自己肯定感が低いながらも、貴族や立場にとらわれず誰にでも癒しを与えようとする強い意志が印象的だった。
また、前作のリリィやルクレティアも引き続き登場し、積極的にアプローチを仕掛ける姿が可愛らしく、それぞれの魅力がしっかり描かれている。
シナリオ:
教会や聖女にまつわる陰謀を軸に据え、時系列が明快で非常に読みやすい。
〈スキルをどう使うか〉というテーマを道徳的な角度から掘り下げ、単なるバトル展開に留まらない奥行きを感じさせる。
伏線も多く、次巻以降に繋がる不穏さを残すラスト構成が巧みだった。
一方で、タイトルが独特かつネタ風なため、本文の真面目なトーンとの温度差がやや気になった。
気楽さ:
教会と王族が関わる展開のため、やや重厚な雰囲気がある。
しかしキャラクター同士の掛け合いや軽妙な会話が緊張感を和らげ、読みやすさを保っている。
真面目なテーマを扱いながらもテンポよく読めるバランスが心地よい。
後味:
重い展開を経たあと、ヒューの行動が確かな“救い”を生む終盤が印象的。
登場人物それぞれに前向きな変化があり、シリーズ全体の方向性を感じさせる余韻が残る。
ヒロインたちとの関係も明るい兆しを見せ、読後感はとても良かった。
長さ:
中盤以降の展開が高密度で進むが、難解さはなくテンポは良好。
一冊としての起承転結がしっかりしており、次巻への布石も自然に組み込まれている。
全体として無駄がなく、ボリュームに対して満足度の高い一冊だった。
よかった点
前作から登場しているヒロインたちが、ヒューを信頼している関係性が心地よかった。
それぞれが彼に対して見せるアピールが可愛らしく、恋愛面のやり取りもシリーズを通してより自然に感じられる。
また、ヒロイン同士が嫉妬しつつも根本的には仲が良く、お互いを尊重し合っている点も好印象。
“ハーレム”構成でありながらもドロドロせず、全員が魅力的に描かれているのが本作の強みだと感じた。
気になった点
主人公が“スキルバレ”を恐れるあまり、仲間が苦しんでいる場面でも使用をためらう姿勢がやや気になった。
状況によっては、スキルの存在を隠したまま補助的に使うなど、もう少し工夫の余地があったように感じる。
せっかく〈洗脳〉スキルで自由に能力を付け替えられる設定があるだけに、その応用を見たかった部分も。
また、タイトルがややネタ調であるため、物語の真面目な雰囲気とのギャップが目立ち、印象がちぐはぐに感じる箇所があった。
実際に読んで感じたこと
前巻での出来事を踏まえ、ヒロインたちとの信頼関係がすでに築かれている状態から物語が始まり、安定感のある人間関係が心地よかった。
特に今回は、これまで少し距離のあったレクティとしっかり絆を深めていく展開が印象的で、彼女の魅力がより際立っていた。
各ヒロインの個性を活かしたアプローチも可愛らしく、ラブコメ的な掛け合いを楽しめた点も良い。
ストーリー全体としても練られており、陰謀要素と人間ドラマのバランスが取れた面白さがあった。
ただ、〈洗脳〉スキルの存在を知る人物が少しずつ増えており、今後ヒューがどんな選択をするのかが気になるところ。
まとめ
『洗脳スキルで異世界無双!?②』は、聖女たちを中心に展開する教会編として、シリーズの新たな一歩を感じさせる巻でした。
ヒューの誠実な生き方やヒロインたちとの信頼関係がしっかり描かれており、陰謀の中にも優しさと温かさが残る構成が印象的。
一方で、〈洗脳〉スキルという危うい力をどう使うかというテーマがさらに際立ち、彼の信念と覚悟が試される展開が続く。
ラブコメ的な可愛らしさとシリアスな葛藤の両方を楽しめる、異世界ファンタジーとして安定感のある一冊だった。
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<前巻のレビュー>
洗脳スキルで異世界無双!?①はこちら

